概要
リモート会議等が増えたことでマイクをパソコンに入力することが増えた。話者聴者双方の快適性のため、家にあるダイナミックマイクを通話で使用することにした。その際電圧をラインレベルまで引き上げるためのアンプを制作した。
回路のユニバーサル基板への実装と筐体への実装が完成し,実用中である.
目標
昔使っていたカラオケ機能付きレコードプレイヤーに付属していたダイナミックマイクが残っていた。オーディオテクニカのAT-X11という型番。この出力信号をラインレベルまで引き上げ、PCへ入力、通話で使用できるようにすることを目標とした。
設計 (回路)
opアンプで非反転増幅回路を実装した。 図1に回路図を示す。電源回路はUSB microBによる5Vを使いたかったので (以前microBソケットを大量に購入し、余っているため)、opアンプは両電源用を片電源で使うことにした。
入力信号はバイアスしてopアンプに入力される。増幅回路は2段にして80dBほどの利得が得られるように設計した。設計上は、40 + 43.2 = 83.2dB。
直流成分が増幅されないように、-入力にデカップリングキャパシタを挿入し、直流成分にとってはボルテージフォロワになるように設計してある。これはマルツの レールツーレールオペアンプLMC6482使用レポート―簡易集音装置の製作実験 を参考にした。
入力段のカップリングキャパシタは、後ろの (小信号等価回路における) インピーダンスが十分高いことから、もっと小さい値でも良いはずだが (RC ハイパスフィルタを構成する)、適当に手元にあった 100μF のものを採用した。実際に計算してみると、カットオフ周波数 0.031 程度になり、こんなにいらない。むしろ、電源投入時のポップノイズが大きくマイクにかかることの方を考慮するべきだった。
電源は昔使用していたモバイルルータに付属したACアダプタ (USB micro B 出力) を使用することにした。安物っぽく、スイッチングノイズが懸念されることからRLCローパスフィルタをかけた。
これをユニバーサル基板へ実装した。配線図を図2に示す。引き回しにはノイズ対策のための考慮事項があるはずだが、とりあえずアースループができないようにだけした。C6はopアンプの直前につけたほうが良かったかもしれない。
設計 (筐体)
筐体の役割として、信号入力、信号出力用3.5mm フォーンプラグ、電源スイッチ、電源用 USB micro B ソケットからなるインターフェースを実装することと、シャーシアースをしてノイズを防ぐことがある。これを実現するために最低限のことはやった。外形を図3に示す (この画像には電源コネクタが実装されていないが、このあと四角孔部分にL字に曲げたアルミの治具とともに接着剤で (!) 固定された)。
まず、アルミ板をホームセンターで買ってきて、曲げてコの字型にした。インターフェース用の穴は、ドリルで小さい穴を開けた後リーマで大きくし、ヤスリですこし磨いた。手垢と傷がすごいので、脱脂や塗装などをしたほうがいいのだろうが、経験も知識もないので今後の課題とした。ゴム足も着いていないが、今後の課題。
基板取り付け用にM3スペーサがほしかったが、近所のホームセンターではM4からしか取り扱っていなかった。幸い手持ちに2個あったので、対角をスペーサで、残りをナットでかさ増ししてとりあえず固定した。インターネットを見ていたら、おもちゃ屋さんにあるかもしれないということで、今後の課題として物色に行くことにする。
現在下の台座部分のみできており、ふたは今後の課題。
電源用のソケットを逆向きにすればもう少し配線が楽できれいかもしれなかった。
検証
ゲインの実測をするため、正弦波発生器を実装し、それを入力した。発生器を図4に示す。
部品が少ない簡単な発振回路2選 を参考に、出力段にバイアスとエミッタフォロワを付加した。バイアスし直しているのは、Q2の V_BE によって波形下部がクリップされてしまうため。
この発生器によって、1.6mVP-P の正弦波が得られるので、これを当アンプに入力した。結果、1.16VP-P が得られた。この記事 によれば、ダイナミックマイクの出力電圧 (入力感度) は
1.0 ~ 3.16 [mV/Pa]
とのことなので、ラインレベルを目標とすれば要求を満たすゲインだと思われる (民生品としては大きすぎるのかもしれないが (参考: 0.31V、マザーボードに入力して壊れなかったのでよいことにする。音量を下げる分についてはソフトウェアで行えばよい)。
ちなみに、1.16VP-P / 1.6mVP-P = 725 = 57.2dB。
図5 に実験の様子を示す。左側が正弦波発生器。正弦は発生機には図? の回路に加えて、分圧抵抗による降圧をしてある。
図6 に観測された波形を示す。Ch.1 がアンプの出力で Ch. 2 が正弦波発生器による入力 (エミッタフォロワ・分圧のあと)。 目視する上では大きな歪は無いように見える。歪率は解析していない。もとの入力波形が (簡単な回路のためか) かなり歪んでいるため。